古賀春江資料室

洋画家・古賀春江(1895-1933)のデータベースを制作中です。

美貌なる虚無 (一・ニ七×〇・九六尺) 一九三〇年

それはア・プリオリの世界と感覚美の世界との結びつきの一つの方法である。
人体の形態をせるもの、鶏の形の記号。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.75
  1. 2013/12/26(木) 03:41:43|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

樹立 (〇・七〇×〇・五〇尺) 一九二七年

窓に過熱の風がある
深緑の森の樹木等
強力な速力を以て突き上げる樹木等
耀かしく烈しき力
中心は依然中心にあるべきであるか
彼等は上下前後に眼まぐるしく振動する
彼等は一瞬にして静止する
彼等は彼等の秩序を破壊しない
光る粉末を放散する中で
一線の鋭い警笛の叫びを聞かないか



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.63
  1. 2013/12/26(木) 03:35:43|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

梅 (一・六五×一・二七尺) 一九二四年

直線と直角と四角な平面との重りの中を、斜めに切る梅の枝の直線。五瓣の白い丸い葩がその中を散らばりながら縫ひつける、単純な形と色の組み立て。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.57
  1. 2011/07/13(水) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

風景 (一〇号F) 一九二六年

卯の花でも匂ひさうな新緑の中の住家
薔薇の垣の木戸を押すと
芝生について楽器の音でも流れて来さうだ
小じんまりと綺麗で
何の汚点《しみ》もない白紙の手帖だ
家の中ではやさしい主婦が明るい窓際で、
鏡台の前にでも坐つてゐさうな
少し感傷的な初夏風景。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.57
  1. 2011/07/12(火) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

花 (二・〇〇×一・六五尺) 一九二六年

ダリアを主に小花をあしらつて壺に挿した机上の静物。
花の茎や葉や壺や、机の上の影や背景などの組み立てる立体感と、それ等のものの運動の形態。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.58
  1. 2011/07/11(月) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

赤い風景 (一・八五×一・三〇尺) 一九二六年

土手の上から歩を休めて見る門口の向ふまで、
太陽が疲れた光を撒いてゐる。
私も少し疲れた。

夕暮れに間近い、赤い色の中で、
休みに入らうとする生もの等の雑然とした音が聞えて来る。遠いのはやさしく 近い音は大きい。

刈あとの田と稲束。
家路へ帰る人の感情が耳の所で色になつて聞える。
何かがチラチラする気配がする。
これはずつと遠くまでつづいてゐます。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.58-59
  1. 2011/07/10(日) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

船着場 (二・〇〇×一・六五尺) 一九二六年

艦から上陸した水兵がどんどん街へ団つて行く。海の向ふから来た見馴れぬ人達だ。
舗石の上の大きな跫音、匂ひのよい吸ひかけの煙草を女達の前に出す。
トントントン 発動汽船のエンヂンの音、赤い灯、青い灯、ごみの浮いた港の水がゆれて、潮の匂ひと腐つた果実のやうな匂ひ。チカチカ変るフイルムだ。
白紙の上に五色の針が降つたやうに、騒然として多彩で落ちつきなく天上へせり上つてゆく。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.59
  1. 2011/07/09(土) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

風景 (二・〇〇×一・六五尺) 一九二六年

双方から来た森の木の葉の塊り、木の根の大きさ、中景の地面と家、空の白雲。
筆と筆との接ぎ合せのリズムを生かしながら大きな立体を描かうとした。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.60
  1. 2011/07/08(金) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

美しき博覧会 (一・八五×一・二七尺) 一九二六年

薔薇色のガラスの踊り子は三角形のガラスの上に立つてゐる
頭の上の青い林檎は軽気球で
遠い水平線の上から銀の箭が空へ飛びます

大きな芍薬の紫色の中で
南洋の黒ん坊は憂鬱な踊りを踊ります

モノクルをかけたシルクハットの紳士
彼は仲々上等のアイスクリームで出来てゐます

若夏色の水が流れて
ガラスの踊り子が沈みます
それは水中の赤い金魚です

白い文明的な空間に華やかなドームが浮き
黄金の日向葵が揺れる

楽隊の音も明るい月夜
柔らかに膨らんで夢は陞《のぼ》る
脚の長い酒の罎

美しい博覧会は魔術師の光る花束です。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.60-61
  1. 2011/07/07(木) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0

窓外風景 (一・二七×〇・九六尺) 一九二七年

眼に映る一切の風景が
異常に孤立して淋しく見えることがある
ガッシリと組み合はされてゐながら
お互が全然無関係でゐる時が。

錆のついた感覚機械で
いつもすれちがつた人達だ。
光線を手で撃つて見て
精神の位置がわかるだらうか。

窓を閉めて
よごれた顔に掌を被せる。



初出:『古賀春江画集』(1931年、第一書房)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.62
  1. 2011/07/06(水) 18:00:00|
  2. 解題詩
  3. | コメント:0
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