古賀春江資料室

洋画家・古賀春江(1895-1933)のデータベースを制作中です。

広告風船

電車・自動車・オートバイの爆音 ラヂオの声 工場のサイレン等等の耳を聾するばかりの狂噪楽
ビルデイングの直線とアスフアルト舗道の直線の交錯 起重機の突き上る斜線 眼に見えぬ電流の唸り 群衆の喊声 体臭 熱 光
渦 渦
小さな個人の思想や感情は轢殺され白い気体となつて四散する

それ等都会の凡ての沸騰する喧騒を侮蔑する如く澄んだ清朗なる上空に不感無覚の如き表情の孤独の彼女! それはこの上もなく軽快で高貴で美しく魅惑的でさへある
それは地上を天へ繫ぐ桃色の幻影の鎖であらうか?



初出:詩画集『古賀春江』(1934年9月、春鳥会)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.146-147
  1. 2010/07/29(木) 18:00:00|
  2. | コメント:0

感傷

煙草 百科事典 一輪揷のカーネーシヨン
そしてすんなりとした艶美なあなたの脚
私は坐りながら遠い昔のかすかな音楽を聴く
濤間に揺られる小舟のやうに
消えたり現れたりする追想
私は盗賊のやうに
夜毎大切な幻影を盗む
それで あなたは瘻れて〔#「瘻」に「ママ」の注記〕ゆく
窓の外の青い空
碧色の翼の小鳥
あなたは 細い目を上げる……
今日も 窓際の夏

   (一九三〇)



初出:詩画集『古賀春江』(1934年9月、春鳥会)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.142-143
  1. 2010/07/17(土) 18:00:00|
  2. | コメント:0

アポロンの花

腰の細い駱駝に乗つて
僕は永遠の沙漠を馳る

僕は青い月光の外套を着て
空中の椰子果を啖べる

僕は憂欝なる魂で(魂を以て)
文明の星等を抱き
永遠の沙漠を馳る

   (一九三〇)



初出:詩画集『古賀春江』(1934年9月、春鳥会)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.138
  1. 2010/07/10(土) 18:00:00|
  2. | コメント:0