古賀春江資料室

洋画家・古賀春江(1895-1933)のデータベースを制作中です。

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詩抄(青い海、白い曇り日、夜の夢、季節の確信)

     青い海

青蛙が、矢張り青ペンキの塗り立てで
二匹が却々〔#「却々」に「ママ」の注記〕話もしない
二つの蝶が藪の丸竹の上に書いたこの恋文は
花の宛名を探がしてゐる
働き掛けた自働車
女の可愛い眼ざしの上に勝ち誇つたやうに映つてゐる
可愛い女は音の中から生れて来て海の底へ行かうとしてゐる
海の中は底まで平たいので平気で歩けばよい
諸君は何とも思はないか。


     白い曇り日

花屋に花の窓があつて
螢の美しい羽が羽搏いてゐる
自転車に乗つた少年は花屋の窓の前で立ち止つて花を見てゐる
花の日、花の家。
花日、花達は何所か自由な所へ行かうと思ふ
遠い海岸の方から鐘の音が響いて来る
幸な思ひを思はせる音が
遠くから聞えて来る。


     夜の夢

青蛙の一匹がランプの消えた室の中で
空の中の光りを望めてゐる
不思議な空の中では
あんなにいろいろな珍らしい美しい事があつてゐるのに
蛙の空の中は何の事もない
蛙は不思議に思つた
あつちはあんなに面白いのに
あつちは何といふ淋しいことだらう
あつちとこつち
どうしてこんなに違ふだらう
どうしても不思議にわけがわからない
考へて見てゐるが同じことだ

この室のランプは暗い
あの空の月の中に這ひ込んで行つたら
空想は夢だと言ふ
昔の夢だけが生きてゐるのか。


     季節の確信

知らない海の遠い光
遙かな思ひ出の海の島
海の女達は島の鳥達と共に話をし
魚貝と共に遊んでゐる

丸い海の山
丸い山の鳥等虫等
月が出てゐる
空を眼がけるとむづがゆくなる。



初出:『美術新論』8巻9号(1933年9月)p.33
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.128-131
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  1. 2010/06/27(日) 18:00:00|
  2. | コメント:0
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