古賀春江資料室

洋画家・古賀春江(1895-1933)のデータベースを制作中です。

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野原

突然に野原に生えた樹であつた
それはすばらしく大きな果実をその頂上の方に持つてゐた
それだから星は
その近辺ではあんまり光らなかつた
そんなに大きく光沢のよい果実があつたからつぽの野原に……
人間が 然し やつて来た
あんまり青過ぎる男なのでそんなに目立たなかつたし また
どんな場合にもその心臓や頭や胃袋を露出させない つつましい男だつたのでむづかしいことはなかつた
樹によぢ登つて果実をもぎ取らうとしてゐた
彼の手が延びた 長く長く延びた
それからまたそれを引込めた
また延した そしてまた引込めた
最後に一つの果物も得ずに
ふわ/\と地上に降りて来た
顔があつた
それが笑つた
野原はどこまでも拡がつて行つた 青く青く

   (一九二六)



初出:詩画集『古賀春江』(1934年9月、春鳥会)
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.135-136
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  1. 2014/09/11(木) 22:37:03|
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