古賀春江資料室

洋画家・古賀春江(1895-1933)のデータベースを制作中です。

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美術家家勢調査

                            中央美術編輯部調査
   一、貴方は毎朝何時にお起きになりますか。
   二、床屋へは何日隔き若しくは何ケ月隔き位ゐに行かれますか、失礼ですが。
   三、御酒と煙草はどのくらゐ召し上りますか、序でに御愛用の品種を。
   四、御健康を保つ上に何か特別の養生法をおやりになつて居られますか。
   五、奥様をお呼びになるのに常々どういふお言葉をお用ゐになりますか。
   六、此の世で一番憎らしいとお思ひになるものは何んですか。
   七、貴方がお得意とする隠し芸を。
   八、貴方の娯楽と道楽をお聞かせ下さい。
   九、一ケ年を通じての御制作は平均どれ位ゐになられますか。
   十、和歌、俳句、短歌、都々逸、端唄──何んでも一ツ二ツ御近作を。

 拝復 御下問の諸項に対して「ふるつたお答を」との仰せに候へ共、その生活がピリツともふるはぬ小生にはお答ばかりをどうふるはせやうも無之候。第一朝起きること寝ること全く出鱈目にて近くの兵営より爽快なるラツパの聞え参り候通り、あれに倣つてやつて見やうと思ひ立ち居り候も未だ一度も実行せしこと無之候。晨に星を戴いて野に立ち、夜は行灯の下にワラヂを作つたり、書物を勉強したり、二宮尊徳のやうにやつてみやうと思つても思つたばかりに候。
 酒、酒は少し甞め候、中川〔紀元〕さん所でいつも御馳走になるときまつて小生の前にも盃を据えられ候故遠慮なしにチビ/\となめはじめ中川さんが三本位空にされる間に少生は二杯半位にてとうぜんとなり候。それ以上飲めば大病になり候。煙草は朝日を少し、貰えばどんな上等でも吸ひます。
 この他のお尋ねにお答すれば自ら暗やみの恥を明るみへ出すやうのもの故これにて廻れ右を致し候。かくし芸は特に公開を憚り候。御許し下され願ひ度候。



初出:『中央美術』11巻6号(1925年6月)p.65
底本:古賀春江文集『写実と空想』(中央公論美術出版)p.219-220
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